こんにちは。越谷市せんげん台のパーソナルジム「トータルボディメイキングスタジオI’s(アイズ)」です。
「在宅ワークになってから、体重が増えた」「テレワークが続いて、なんか体がおかしい」という話を、ここ数年でよく聞くようになりました。「特にたくさん食べているわけじゃない」「運動は前と変わらず週2回やっている」のに、体が変わってきた、という方が多い。
これには理由があります。在宅ワークは、体に影響する複数の要因を同時に変えます。一つひとつは小さくても、それが重なるとかなり大きな変化になる。今日はその仕組みを整理します。
「NEAT」という見えないカロリーが消えた
在宅ワークで体が変わる最大の理由はここにあると思っています。「NEAT」という概念です。
NEATとは「Non-Exercise Activity Thermogenesis」の略で、運動以外の身体活動によるエネルギー消費のことです。ウォーキングやジムでの運動は含まない。日常のあらゆる「ちょっとした動き」——立ち上がる、歩く、姿勢を変える、手を動かす——これらすべてがNEATです。
このNEATが、在宅ワークによって急激に減ります。
出勤していたとき、無意識のうちにどれだけ動いていたか、考えてみてください。最寄り駅まで歩く。改札を通る。階段を使う。電車の中で立っている。職場の入口から自席まで歩く。コピー機まで歩く。会議室に移動する。同僚の席に話しかけに行く。ランチに出かける。トイレまで歩く——これらは全部、NEATに含まれます。
在宅ワークになると、これらがほぼ消えます。起きてからパソコンを開くまでの移動は数歩。会議は画面上。同僚への連絡はチャット。ランチはキッチンへ数歩。これらの「消えた動き」の合計が、思っているよりずっと大きい。
片道30分の徒歩通勤(駅までの往復を含む)を想定すると、1日で約200〜400kcalのNEATが通勤だけで生まれます。これを週5日で計算すると、週に1,000〜2,000kcal。月に4,000〜8,000kcalの差になります。体脂肪1kgが約7,200kcalなので、通勤がなくなることだけで、月に0.5〜1kg体重が増える計算になります。意識的な食事制限や運動をしていても、この「見えない消費」の差を埋めることは簡単ではありません。
通勤が実は「運動」だったという発見
在宅ワークになって初めて気づく人が多いのが、「通勤が思っていた以上に体を動かしていた」ということです。
通勤を「運動」として捉えていた人はほとんどいないと思います。でも機能的には、毎日一定量の歩行・立ち姿勢・階段昇降が強制的に組み込まれていました。意識しなくても動いていた。それが構造として存在していた。
在宅ワークはその構造を取り除きます。意識して動かない限り、動かない環境になる。「特に運動していないが、通勤があったから一定量動いていた」という状態が、「特に運動していなくて、通勤もないからほとんど動いていない」に変わります。
週2〜3回ジムに行っている人でも、その以外の時間に動いていなければ、トータルの活動量は出勤していたときより少ない可能性があります。「週に3回ジムに行っているのに体が変わってきた」という方の多くが、このNEATの減少を見落としています。
キッチンが常に近い問題
在宅ワークのもう一つの大きな変化が、食環境です。
オフィスにいるとき、何かを食べるには多少の手間がかかりました。売店に行く・コンビニに出る・自動販売機まで歩く・休憩時間まで待つ——食べることにはある程度の「摩擦」がありました。この摩擦が、無意識の間食を抑えていました。
在宅ワークでは、キッチンが数歩先にあります。気が散ったときに、なんとなく冷蔵庫を開ける。仕事の合間に、何となくお菓子を口にする。集中できないとき、コーヒーと一緒に何かを食べる——こういった「ながら食い・合間食い」が急増します。
一回の量は少ない。でもそれが一日に何度も起きると、合計では相当の量になります。「食事の量は変わっていない」という人でも、食事と食事の間のこういった「見えない摂取」が増えていることが多い。
さらに、仕事のストレスを食べることで発散しやすくなります。オフィスでは「ちょっと仕事から離れたい」と思っても、できることが限られていました。在宅では「ちょっと気分転換」の選択肢として、食べることが最も手軽になります。ストレスと食事の距離が縮まることで、感情的な食事が増えやすくなります。
姿勢が崩れる速度が速い
在宅ワークで見過ごされがちな変化が、姿勢の悪化です。
オフィスの椅子は、業務用に設計されていることが多い。高さ調整・背もたれ・肘掛け——一定の姿勢サポートがあります。在宅のデスク環境は人それぞれで、ダイニングの椅子・ソファ・ベッドの上——身体に合っていない環境でパソコンを使い続けていることが多い。
また、オフィスには「自然な移動のタイミング」がありました。会議室に移動する、誰かのところに歩いて行く、昼食に出かける——これらが自然な「休憩」「姿勢のリセット」になっていました。在宅では、移動がないためにこのリセットが起きません。同じ姿勢で何時間も座り続けることになります。
筋肉は長時間同じ姿勢でいると、その形で固まっていきます。前傾した頭、丸まった背中、縮んだ胸筋——これが数ヶ月続くと、姿勢として定着します。姿勢の悪化は見た目に影響するだけでなく、呼吸の浅さ・肩こり・腰痛・首の痛みとも連動します。
睡眠と生体リズムの乱れ
在宅ワークは、睡眠にも影響します。
通勤がなくなると、起きる時間が柔軟になります。「少し遅く起きても大丈夫」という状況が続くと、自然と就寝・起床時間が後ろにずれていきます。また、朝の通勤中に浴びていた屋外の光がなくなります。朝の光は体内時計をリセットする重要な役割を果たしていて、これが失われると昼夜のリズムが乱れやすくなります。
在宅では、仕事と生活の境界が曖昧になります。「少しだけ」と思って夜遅くまで仕事を続けてしまう。夕食後もパソコンやスマートフォンの画面を見続ける。これがメラトニン(眠気を引き起こすホルモン)の分泌を遅らせ、眠れない・眠りが浅い状態を作ります。
睡眠が乱れると、食欲ホルモンが崩れます。グレリン(空腹ホルモン)が増え、レプチン(満腹ホルモン)が減る。翌日の食欲が増えて、特に高カロリーなものへの欲求が高まります。在宅ワークでの「なんとなく食べすぎる」の背景に、睡眠の乱れが関係していることがあります。
なぜ変化が「急速」なのか
ここまで挙げてきた要因を整理します。
NEATが減る・食事量が増える・姿勢が崩れる・睡眠が乱れる——これらは在宅ワークによって、ほぼ同時に起きます。一つひとつは小さくても、複数が重なると体への影響は大きくなります。
たとえば、NEATが減って200kcal/日少なく消費するようになり、間食が増えて150kcal/日多く摂取するようになり、睡眠の乱れでさらに100kcal/日余分に食べるようになった場合——合計で1日450kcalの差が生まれます。これが1ヶ月続けば約13,500kcal、体脂肪換算で約2kgに相当します。
しかも、これらの変化は「意識していない」ことが多い。食事を増やした意識がなく、運動をやめた意識もないのに体が変わっていく。だから原因が分からず対処もできないまま、変化が続いてしまう。
変化が急速に感じられるのは、「大きな一つの変化」ではなく「小さな複数の変化が同時に起きている」からです。
筋肉量が特に落ちやすい
在宅ワークで見落とされがちな変化として、筋肉量の低下があります。
体重が増えたとしても、それは必ずしも「脂肪が増えた」だけではありません。在宅ワークでは活動量が落ちるとともに、筋肉への刺激も減ります。重力に抵抗する筋肉(抗重力筋)は、立つ・歩くという日常動作で常に使われていますが、座りっぱなしの時間が増えるとその刺激が減る。ジムでトレーニングはしていても、日常の動作量の低下で失われる筋肉刺激の分を補えていないことがあります。
筋肉量が落ちると基礎代謝が下がります。基礎代謝が下がると、同じ食事量でも余剰カロリーが生まれやすくなります。体重の増加が体脂肪の増加だけでなく、筋肉量の低下を含んでいると、外見上は「太った」のと似た変化でも、実際には体の組成が変わっています。
「在宅ワークになってから体が重い・動きにくい感覚がある」という方の多くに、この筋肉量の低下が関係していることがあります。
長時間のデスクワークによる特有の体の変化を指す言葉です。腸腰筋の短縮・大臀筋の抑制・胸椎後弯・前傾頭位・浅い呼吸——これらが組み合わさって、姿勢の悪化・腰痛・肩こり・疲れやすさが生じます。在宅ワークはデスクワークの時間を増やし、自然な移動のタイミングを減らすため、この症候群が加速する環境になりやすい。
在宅ワークで体を守るために何をするか
問題の構造が分かれば、対処の方向も見えてきます。失われた「構造」を、意図的に作り直すことです。
消えたNEATを意図的に作る。通勤がなくなった分の歩行を、意識的に補う。朝に「仮想通勤」として10〜15分の散歩を入れる。昼休みに外に出る。1時間に1回、立ち上がって少し歩く。これだけで消えたNEATをある程度回復できます。
食事の「摩擦」を作る。仕事中のお菓子をすぐ手の届くところに置かない。食べるなら「食事の時間」と決めて、仕事スペースから離れた場所で食べる。冷蔵庫の前を通るルートを変える。環境を変えることで、無意識の間食を減らします。
起床時間を固定して朝に外の光を浴びる。在宅でも、起きる時間は変えない。朝起きたらすぐに外に出て、日光を浴びる。これが体内時計のリセットになり、睡眠の質を守ります。
仕事と生活の境界を物理的に作る。仕事用のスペースとそれ以外のスペースを分ける。仕事が終わったらパソコンを閉じて別の部屋に移動する。ルーティンとして「仕事終わり」の儀式を作る。これが夜遅くまでの仕事と睡眠の乱れを防ぎます。
姿勢のリセットを意図的に入れる。1時間に1回、立ち上がって胸を開くストレッチをする。肩甲骨を動かす。深呼吸を数回する。自然には起きない「リセット」を、スケジュールとして入れることが必要です。
現場で見えてきたこと
在宅ワークが広まってから、「特に何もしていないのに体が変わった」という相談が増えました。話を聞くと、ほとんどの方に共通のパターンがあります。通勤がなくなった。キッチンが近い。昼の外出がなくなった。夜のパソコン時間が増えた。
「食事は変えていない」「ジムも行っている」という方でも、日常の活動量が大きく落ちている場合、体への影響は出てきます。週2〜3回のジムは変わらなくても、それ以外の時間の活動量がゼロに近づいていれば、トータルでの消費は減っています。
在宅ワークは体づくりにとって「難しい環境」です。これは個人の意志の問題ではなく、環境の問題です。環境が体を変えているのだと理解できると、対策の方向が「もっと頑張ろう」ではなく「環境を変えよう」になります。意志より構造。これが在宅ワーク時代の体管理の基本的な発想です。
在宅ワークで体が変わるのは、「楽になったから怠けた」ではなく、「体を動かす構造が環境から消えた」からです。通勤・移動・自然な立ち姿勢——これらは「運動」として意識されていなかったけれど、体を支えていた。その構造がなくなれば、体は変わります。
意識して取り戻すことはできます。難しいですが、できます。まず「何が変わったか」を知ることが、その第一歩です。
孤独と体の関係
在宅ワークの体への影響として、あまり語られないことがあります。孤独感や社会的な孤立が、体に影響するということです。
オフィスには、意識しなくても人との接触がありました。朝の挨拶、雑談、ランチの相手、仕事上のやりとり——これらは「社会的な繋がり」の一形態で、精神的な健康に貢献していました。在宅ワークでは、これらが画面上の文字に置き換わります。
社会的な孤立は、コルチゾール(ストレスホルモン)の分泌パターンに影響します。慢性的な孤独感はコルチゾールを上げやすく、これが内臓脂肪の蓄積・食欲の増加・睡眠の乱れと連動します。「なんとなく体の調子が悪い、気分も上がらない」という状態が続く場合、社会的な繋がりの減少が背景にあることがあります。
また、人の目があることは行動を律する効果があります。「誰かに見られている」という状況が、食べすぎや体を動かさないことへの自制を助けていました。在宅では誰にも見られない。「誰も気づかないから少しくらいいいか」という心理は、ごく自然に生まれます。
これは意志の弱さではなく、人間の社会的な性質です。在宅ワークでは、この「社会的な目」による自然な自制が失われます。意識的にその代替を作ること——誰かに報告する、オンラインでもいいから人と繋がる時間を作る——が、体の管理を助けることがあります。
「快適すぎる環境」が体を変える
少し視点を変えた話をします。在宅ワークは、多くの意味で「快適」な環境です。通勤がない、好きな時間に仕事ができる、服装も自由、気温も快適に保てる——これらは生産性の面ではメリットですが、体の面では「刺激が減る」ことを意味します。
体は適度な不快・適度なストレス・適度な負荷に対して反応することで機能を維持します。暑さや寒さへの体温調節・起伏のある地形を歩くこと・混雑した電車で姿勢を保つこと——これらは「不快」かもしれないけれど、体に一定の刺激を与えていました。
在宅で常に快適な環境にいることは、体への刺激を均一に・低く保つことでもあります。体は使われた分だけ機能を維持し、使われない分だけ機能を手放していきます。快適すぎる環境が、体に「これだけの機能で十分だ」と判断させてしまうことがあります。
「楽になったのに、なぜか体が辛くなった」という経験をした方は、この逆説を体で感じているかもしれません。不便さの中に、体を保つための刺激があった。それが消えると、体も変わっていく。
在宅ワークの「いいところ」を体づくりに使う
在宅ワークのネガティブな面を書いてきましたが、うまく使えばポジティブな面もあります。
通勤がない分、朝の時間が生まれます。その時間を運動に使える人は、出勤していたときより運動の機会が増えます。実際に、在宅ワークになってから「朝のランニングを始めた」「朝にジムに行けるようになった」という方がいます。
昼休みの使い方も自由になります。オフィスではランチの選択肢が限られることが多かったけれど、在宅では昼食を自分で作れます。外食より自炊の方が食事の質をコントロールしやすい。時間があれば昼の散歩も入れられます。
仕事の合間にストレッチや軽い運動を入れることも、在宅ならしやすい。オフィスで突然立ち上がってストレッチするのは目立ちますが、在宅なら誰の目も気にしない。この自由を、体のメンテナンスに使えます。
要は、在宅ワークは「体に悪い環境」ではなく「体への影響が意識に依存する環境」です。意識しなければ悪化し、意識すれば改善のチャンスにもなる。オフィスは「意識しなくても動く構造」を持っていましたが、在宅は「意識して構造を作る必要がある」環境です。どちらが体に良いかは、最終的にその人がどう使うかによります。
在宅ワークで体の変化を感じている方へ。
生活スタイルに合わせた整え方を一緒に考えます。