こんにちは。越谷市せんげん台のパーソナルジム「トータルボディメイキングスタジオI’s(アイズ)」です。
「見せ筋」という言葉があります。大胸筋・上腕二頭筋・三角筋——見た目のためにつける筋肉、という意味で使われることが多い。機能的なトレーニングが重視される昨今、この「見せ筋」がどこか一段下に見られる空気があります。
でも少し待ってほしい。「見た目を良くしたいからトレーニングする」というのは、そんなに低い動機でしょうか。そして「見せ筋」と呼ばれる筋肉は、本当に機能的でないのでしょうか。今日はその話をします。
「機能的トレーニング」が持ち込んだ序列
2000年代以降、フィットネス業界で「ファンクショナルトレーニング(機能的トレーニング)」という概念が広まりました。日常生活やスポーツの動作に即した、複合的な動きを重視するアプローチです。これ自体は意味のある視点で、従来のトレーニングが見落としていた部分を補ってくれました。
でも同時に、一つの「序列」が生まれました。「機能的なトレーニング=優れている」「見た目のためのトレーニング=浅い・古い」という暗黙の評価です。ピラティス・ファンクショナルトレーニング・コアトレーニングが「賢い選択」で、ベンチプレスや腕立て伏せ・バーベルカールが「旧時代的」と見られるような空気。
この序列に、私は少し違和感があります。
機能的なトレーニングは確かに重要です。でも「機能的かどうか」は、何の機能のために、という文脈なしには判断できない。鏡の前で見た目の良い体をつくることが目的の人にとって、それに最も直接的に作用するトレーニングが「最も機能的なトレーニング」ではないでしょうか。
見た目を良くすること自体が「機能」だ
「見た目を良くしたい」という動機を、表面的・浅い・虚栄心のようなものとして扱う空気があります。でも本当にそうでしょうか。
鏡を見て「いい体だ」と感じることは、自信に繋がります。自信は行動に影響します。どう動くか、どう振る舞うか、どんな選択をするか——自分の体への感覚は、生活全体に影響しています。「見た目が変わって、人前での自分が変わった」という経験をした方を、現場で何人も見てきました。
見た目の変化が精神的な変化をもたらし、それが行動の変化に繋がる。これは「機能的」ではないでしょうか。心が変わることで動きや姿勢が変わること——これを「機能的」と呼ばずに何と呼ぶのでしょう。
体の機能を「日常生活やスポーツでの動作パフォーマンス」として狭く定義すれば、見た目のためのトレーニングは確かにそこから外れるかもしれない。でも機能を「自分の人生をどれだけ豊かに生きられるか」という広い文脈で考えれば、見た目を良くすることもその一部です。
正直に言えば、見た目を変えたい人が大多数だ
カウンセリングで多くの方と話してきて、思うことがあります。「健康のために体を動かしたい」と言いながら、実際には「見た目を変えたい」という動機が強くある方が、ほとんどです。
これは批判ではなく、観察です。「痩せたい」「筋肉をつけてかっこよくなりたい」「引き締まったお腹にしたい」「肩幅を広くしたい」「細い脚を太くしたい」——これらは全部、見た目の目標です。健康という言葉の裏に、ほぼ必ずと言っていいほど見た目への意識があります。
それでいいと思います。見た目を変えたいという動機は、継続のエネルギーになります。「鏡の中の自分が好きになった」という実感は、続けることの動機になります。この動機を「正しい目標」に変換しようとする必要はない。
特に若い世代・中年世代において、「見た目を変えたい」という動機を持っていない方の方が少数だと思います。そういう人たちが最も必要としているのは、見た目を変えるのに最も効果的なトレーニングです。それがたまたまボディビルディング的なアプローチであれば、それが答えです。
ボディビルディング的トレーニングの原則は揺るがない
ボディビルディングのトレーニング原則は、「オールド」と呼ばれながら、実は現代の運動科学と高い一致を見せています。
漸進的過負荷(Progressive Overload)——徐々に負荷を上げていくことが筋肥大・筋力向上の最も重要な原則です。これはボディビルディングが実践してきたことで、現代の研究でも繰り返し確認されています。
トレーニングボリューム(Volume)——セット数×レップ数×重量の総量が筋肥大に相関するという考え方も、ボディビルディングの実践から来て、研究で裏付けられています。
筋肉への意識的な収縮(マインドマッスルコネクション)——収縮させたい筋肉に意識を集中させることで、その筋肉の活性化が高まるという概念も、ボディビルダーたちが経験的に知っていて、研究が追いついています。
十分な回復——筋肉が成長するのはトレーニング中ではなく回復中だという原則も、ボディビルディングの文化に根ざしています。
これらの原則は、「新しい機能的トレーニング」によって否定されたものではありません。ボディビルディングのアプローチは、筋肥大と体型変化という目的に対して、今も最も研究されていて最も実績のある方法の一つです。
クラシックな種目は、実は最も基本的な動作だ
ボディビルディングを代表する種目群を見てみましょう。スクワット・デッドリフト・ベンチプレス・オーバーヘッドプレス・バーベルロウ・チンニング(懸垂)。
これらを「古い・機能的でない」と見る意見があります。でも少し考えてみると、これらはすべて「人間の根本的な動作パターン」に基づいています。
スクワットは「しゃがんで立つ」動作です。椅子から立つ、床から何かを持ち上げる前の準備姿勢——これ以上に日常的な動きはありません。デッドリフトは「地面のものを持ち上げる」動作です。これも日常生活の最も基本的な動きの一つです。ベンチプレスとオーバーヘッドプレスは「前方・上方への押す動作」。バーベルロウとチンニングは「引く動作」。
押す・引く・持ち上げる・しゃがむ——これらは人間の根本的な動作パターンそのものです。ファンクショナルトレーニングが「機能的な動作パターン」を重視するなら、これらの種目こそ最も機能的な動作を基本にしていると言えます。
重いバーベルでスクワットをする人が、日常生活で膝が悪くなるどころか、むしろ膝周りの筋力が向上して動きやすくなることが多い。デッドリフトをする人が、重い荷物を持ち運ぶ動作が改善されることがある。「見せ筋をつけるための種目」が、結果的に日常の機能も高めることは珍しくありません。
ボディビルディングのトレーニングは、複数の関節と筋肉を使う「コンパウンド種目」(スクワット・デッドリフト・ベンチプレスなど)と、特定の筋肉を集中的に鍛える「アイソレーション種目」(バイセップスカール・レッグエクステンションなど)の組み合わせで構成されます。コンパウンド種目は、多関節・多筋群の協調的な使用という意味で、非常に「機能的」です。アイソレーション種目は特定部位の発達に有効で、形を作る上で重要な役割を果たします。
筋肉量は健康の資産でもある
見た目のために筋肉をつけることと、健康のために筋肉をつけることは、実は同じことを指しています。
骨格筋量は、長寿や代謝の健康と強く相関しています。筋肉が多い人は、インスリン感受性が高く血糖調節がうまく、基礎代謝が高く、骨密度が高い傾向があります。筋肉は「見た目のためのもの」と同時に「代謝の臓器」でもあります。
ボディビルディング的なトレーニングで筋肉量を増やした人は、見た目が変わるだけでなく、代謝が改善し、体脂肪の管理がしやすくなり、関節を守る筋力がつき、骨への刺激が増える。「見た目のためのトレーニング」が健康上のメリットを副産物として持ってくる。
「健康のため」に筋肉をつけることと「かっこよくなるため」に筋肉をつけることは、目指す方向は違っても、辿り着く場所は重なっています。どちらの動機から入っても、筋肉が増えた体は、健康上のメリットを持っています。
「見た目への欲求」を正直に肯定する
フィットネス業界は時々、「本当の目的は健康であるべき」「見た目だけを目指すのは浅い」という雰囲気を作ることがあります。でも現場の現実として、「かっこよくなりたい」「きれいになりたい」という動機が、継続の強力なエンジンになっていることは確かです。
「健康のため」という動機は崇高ですが、抽象的です。「10年後の心臓病リスクを下げる」という動機より、「今夏、Tシャツが似合う体になりたい」という動機の方が、毎週ジムに来るエネルギーになりやすい。動機の「高さ」より「強さ」が、継続を決めます。
見た目への欲求を動機にすることを、恥じなくていい。鏡の中の自分を変えたいという気持ちは、正直で、具体的で、強い動機です。その動機に正直に乗ることが、トレーニングを続けていく上で大切なことの一つです。
そしてその動機に最も直接的に応えるのが、ボディビルディング的なアプローチであれば——それが答えです。
ウェイトトレーニングの「続けやすさ」
ボディビルディング的なトレーニングには、続けやすい理由があります。フィードバックが明確だからです。
先週より重い重量を持ち上げられた。レップ数が増えた。鏡を見て以前より筋肉がついてきた——これらは明確な「進んでいる」という感覚を与えます。数字が上がる、見た目が変わる、という可視化されたフィードバックは、継続の動機になります。
また、ボディビルディング的なトレーニングには長い歴史と文化があります。何をすれば体がどう変わるかという経験則が積み重なっていて、目指す方向が明確です。この明確さが、何をやればいいか分からないという迷いを減らします。
「楽しいから続けられる」「目に見えて変わっているから続けられる」——これは体づくりにおいて非常に重要なことです。続けることが体を変えるのであれば、続けやすい方法が最も優れた方法の一つです。
10年間現場で見てきたこと
「ファンクショナルトレーニングをやってきたが、体型がなかなか変わらない」と言って来る方がいます。体の動かし方は上手になっているし、姿勢も良くなっている。でも「もっと筋肉をつけてかっこよくなりたい」という目標には近づいていない、という状況です。
こういった方にウェイトトレーニングを導入すると、体型の変化がはっきり出始めることがあります。見た目を変えるために最も直接的に効く刺激が、負荷をかけた筋トレだからです。
逆に「ウェイトトレーニングをずっとやってきたが、体が痛い・動きが硬い」という方に、コアの安定性・柔軟性・動作の質を改善するアプローチを加えることで、ウェイトトレーニング自体のパフォーマンスが上がることもある。
「どっちが正しいか」ではなく、「今その人に何が必要か」——この問いが出発点です。見た目を変えたい人には、見た目を変えるための方法が必要です。それがウェイトトレーニングであれば、堂々とウェイトトレーニングをすればいい。ボディビルディング的なアプローチは、目的によっては最も正解に近い選択肢の一つです。
ファンクショナルトレーニング・ピラティス・ウェイトトレーニング・ボディビルディング。どれが最も優れているかという問いは、あまり意味がありません。何の目的のために、誰のために、という文脈なしには答えられない問いです。
見た目を良くしたい。筋肉をつけてかっこよくなりたい。そのための、最も直接的で実績のある方法——ウェイトトレーニング・ボディビルディング的なアプローチ——を選ぶことは、何も恥じることではありません。むしろ、目的と方法が一致している、非常に合理的な選択です。
どんな方法を選ぶにせよ、大切なのは「その方法が自分の目標に向かっているか」という問いです。見た目を変えたい人がピラティスだけをしていても、目標に近づくスピードは遅い。機能を高めたい人がアイソレーション種目だけをしていても、限界がある。目標と方法の一致が、体づくりを効率的にします。
「見せ筋は不要だ」という言葉を、私は信じません。見た目を良くすることは機能的です。そのための筋肉は、立派に機能しています。
「見せ筋」という言葉への反論
そもそも「見せ筋」という言葉自体に、少し引っかかりがあります。
大胸筋・上腕二頭筋・三角筋・腹直筋——これらが「見せ筋」と呼ばれる。でもこれらの筋肉が、機能的に意味がないかというと、そんなことはありません。大胸筋は腕を前方に押し出す力を生む。上腕二頭筋は肘を曲げる。三角筋は肩を動かす。腹直筋は体幹の屈曲と安定に寄与する。これらはどれも、動作に関わる機能的な筋肉です。
「見せ筋」と「機能的な筋肉」を対立させる見方は、筋肉の役割を誤解している部分があります。見た目に現れやすい筋肉は、大きくなりやすく目立つ筋肉でもあります。大きな筋肉は、一般的に大きな力を出せる筋肉でもあります。「見た目が良い筋肉=機能しない筋肉」という等式は成り立ちません。
ボディビルダーの体が「飾り物で機能しない」かというと、そんなことはない。鍛えられたボディビルダーは、一般人より圧倒的に強く、重いものを持ち上げられて、体をコントロールできます。「見せるために作った体」は、同時に「機能する体」でもある場合がほとんどです。
「旧式」と呼ばれながら消えなかった理由
ボディビルディング的なウェイトトレーニングは、何十年も前から行われています。様々な新しいトレーニング方法が登場し、「これからはこちらが主流になる」と言われながら、ウェイトトレーニングは消えませんでした。
なぜ消えなかったのか。答えは単純で、効くからです。筋肉をつけたい・体型を変えたい・筋力を上げたい——これらの目的に対して、確実に効果を出してきた。何十年もの実績と、何百万人もの成功例が、その有効性を示しています。
新しい方法論が登場するたびに「従来のウェイトトレーニングの限界を超えた」と言われますが、ウェイトトレーニングの基本原則は今も変わらず機能しています。漸進的過負荷・十分なボリューム・適切な回復——これらは50年前も今も有効です。「古い」ということは「効かない」ということではなく、「長く試されてきた」ということです。
料理における基本的な調理技術と同じで、新しい調理法が登場しても、焼く・煮る・蒸すという基本は残り続けます。ウェイトトレーニングの基本種目は、フィットネスの「基本調理技術」に当たります。新しい方法が加わることは良いことですが、基本が不要になることはない。
見た目を変えたい方も、機能を高めたい方も。
目的に合わせたトレーニングを一緒に設計します。